活動方針

OPEN AIR LABの活動方針

OPEN AIR LABは東京西キャンパスの活性化と、持続可能な地域社会への貢献を目指します。

キャンパスの活性化

 最初の大学は学生と教員の組合から始まりました。今も大学が学生の学びの場であることに変わりありません。学生無しの大学,学生無しの教員などありえませんから,大学の本質は学生であると言えます。キャンパスの活性化とは学生の活動が活性化することでなければならず,そのために何ができるかを考えなければなりません。必要なこととしては,キャンパスの居心地が良いこと,教員が魅力的であること,施設が充実していること,事務局が親切であること,などなど色々あり得ますが,OPEN AIR LABでは,それらを含め総じて大学が「面白そう」であることを目指してみたいと考えています。

持続可能な地域社会への貢献

 「自然との共生」の理念に基づく活動は,日本社会の問題解決に役立ち,持続可能な地域社会への貢献をなすと考えています。
 日本では中山間地域の人口減少と一部大都市への人口集中が生じており,これは将来にわたり継続すると予測されています。このことは,地方の経済と文化の衰退と,ひいては日本全体の創造性の減少を経済と文化の両面でもたらす恐れがあります。
 この問題の解決策は,多くの場合,雇用や産業など経済の観点から論じられます。確かに経済的基盤がなければ定住は難しいでしょう。しかし,定住者が増えなければ地域経済の活性化もまた難しいでしょう。これはジレンマであり,状況を変えるのは簡単ではありません。一つの突破口は,若い人が中山間地域に定住する理由が経済だけではないことです。精神的な幸福を求める人々にとって,経済は必ずしも最優先事項ではありません。最近,一部の山間過疎地域(中国山地,日高山地など)で,若い女性の定住人口が増加に転じる例がみられます。この背後には,若い人々の価値観の変化,すなわち物質的・経済的豊かさだけではなく,精神的平安や満足を重視する流れがあると考えられます。大都市にない中山間地域の最大の資源は「自然」であり,この自然の豊かさを活かした地域の活性化は,定住率の増加に一定の有効性を持つと期待されます。

 ここで言う「自然」は,きれいな景色や空気だけでなく,他の動物や菌類や細菌まで含んだ全てです。そしてその動物には,野生動物だけでなく人と共に暮らすいわゆる家畜も含まれます。近年,哲学や人類学において,他の動物の存在が人に与える決定的影響が注目され始めています。そこには人類の歴史が人間だけの歴史ではないという認識があります。人類は,旧石器時代にイヌを家畜化して狩猟効率を高め,有蹄類を家畜化することで新石器革命の扉を開き,馬や牛の力で農業生産性を高めてきました。人類の歴史は,他の動物との歴史でもあります。進化的にも,人間は他の動物種が共在する環境に適応してきたのであり,私たちの心理的枠組みは,そのような文化的/生物学的歴史によって作られてきたのです。自然や人以外の動物の存在が,私たちの精神に不可欠な存在であったとしても不思議ではありません。
 しかし,ここ200年の近代化の進行にともない,人が自然の中で他の動物種と交流できる環境は急速に狭められてきました。だとすれば,その喪失は深いところで我々の幸福を損なっている可能性があります。一部の若い人が中山間地域へ回帰しているのは,そこではこの失われた幸福が得られるからなのかもしれません。多様な生命に満ちた自然との共生を求め,人と自然のつながりを回復し,自然と共にある喜びを増幅させることは,都市にはない地域の魅力の発見や創出につながり,そこで暮らす幸福を育ててくれると期待されます。

a.「キャンパス全体がミュージアム」のコンセプトにもとづく東京西キャンパスの環境整備
 解説版や各種サインの設置,遊歩道整備(周遊路の設置、歩車分離対策など)の他,ベンチ,日陰,充電施設,屋外WiFiなど,学生や訪問者の居方を変え,居心地をよくする環境整備を検討しています。
b.「学生と教員の活動がメディア」のコンセプトにもとづく情報発信
 学生と教員の生の活動それ自体が魅力的なコンテンツであると考えており,それをそのまま見せることを積極的に進めていく計画です。
c.象徴的施設となる「ブリコラ」の整備とそこを用いた活動の展開
 OPEN AIR LABの象徴的空間で,予約なしで自由に使える「コワーキングカフェスペース」と,予約して使う「ワークショップスペース」で構成されます。学芸員・学芸員補佐が常駐し,OPEN AIR LABの活動に関連した展示も行われます。
d.「ミュージアム認定学生プロジェクト」を通じた学生の主体的学修の支援
 学生個人や団体によって行われる「自然との共生」に関する活動から,OPEN AIR LABが認定する活動です。
e.「自然との共生」に関わる正課教育の支援(学芸員課程教育の実施を含む)
 動物園や水族館などで働く際に役立つ、博物館学芸員資格の取得支援を行います。また、各学部学科の「自然」に関わる専門科目のサポートも行われます。
f.学内共同研究:「中山間地域における『自然との共生』の市民科学研究の推進」
 当面,以下の5つのプロジェクトを推進する予定です。
  1)自然情報共有デジタルシステムの開発と活用
  2)新しいインタープリテーションプログラムの研究と活用
  3)発達障がい児と家族に対する多様な動物介在介入(AAI)の実践と研究
  4)高齢者のペット飼育支援活動と研究
  5)伴侶動物の個性と共生の知恵に関する研究